ブラジルのリオデジャネイロのビーチで水を売っていた露店商人がわずか数か月の間にアメリカのハーバード大学で講演するほどのインフルエンサーになりました。
貧困から脱却するために彼が始めたのはユーチューブ。彼の戦略とマインドセットがものすごいためになるのでシェアします。
物売りから数か月で大成功したRick Chesther(ヒック・シェステル)という人物
今回、紹介するのはブラジル人のヒック・シェステル(ポルトガル語読み)。彼はミナス・ジェライス州ピタンギで生まれ、8歳から15歳まで道で野菜などを売って家計を助けていました。いわばブラジルの典型的な貧困家庭に生まれた少年です。
そんな彼は若くてしてリオデジャネイロに引っ越しましたが、なかなか仕事にありつけず、友達の世話になっていました。
しかしそんな状況から抜け出そうと、ヒック・シェステルは立ち上がります。そのときポケットに入っていたお金はわずか70レアル。
そのお金で彼はペットボトルのミネラルウォーターを仕入れて、コパカバーナのビーチで売ることにしたのです。
ヒック・シェステルはなけなしのお金をはたいてミネラルウォーター10本のセットを10レアルで仕入れ、氷で冷やし、1本4レアルで売りました。これだけで売上は40レアル、元手の10レアルを引いても30レアルは利益になります。これを毎日朝早くに起きてひたすら続けて利益を重ねていきました。
これだけならブラジルにいる普通の露店商人ですが、ヒック・シェステルは同時にユーチューブチャンネルを立ち上げます。
彼の動画は1分間で起業について語るというコンセプトで撮られています。とはいえきれいな動画が撮れるiPhoneを持っているはずもなく、古いスマホで撮影した画質の荒い動画を自分の部屋から配信していました。
これをスタートしたのが2018年04月09日。
このとき彼が語ったことを要約すると次のようになります。すごい早口なのでちょうど1分ぐらいで終わっています。
「【1分間起業】リオデジャネイロで失職中だって?だったら10レアル友達に借りて、セントラルステーションに行くんだ。そこで水のセットを買って、氷を持ってコパカバーナに朝早く行ってみろ。
それを4レアルか5レアルで売ればいい。4レアルで売れるとしたら、1ダースのセットのうち2本が自分で飲む分で残りの10本は40レアルになる。
10レアル投資して、40レアルになったってことは300%の利益を上げたことになる。そしたらそのお金を持って再びセントラルステーションに行き、今度は25リットル分の水を18レアルで仕入れるんだ。
中略ーーーー
ただ、それを繰り返すだけだよ。え、自分には水なんて売れないって? だったら職がないのはブラジルの問題じゃなくて、お前の心の問題だろ!」
わずか1分のこの動画がきっかけでヒック・シェステルはテレビ局に取り上げられるようになりました。
その勢いでヒック・シェステルはフェイスブックページとインスタグラムも立ち上げるとわずかの間にフォロワー数が激増。
ユーチューブのチャンネル登録数は数万程度ですが、インスタグラムのフォロワーは14万人を超えています。
テレビ、雑誌が次々と彼を取り上げていった結果、ヒック・シェステルはブラジル各地からセミナーの講師に呼ばれるようになりました。
そしてついに2018年8月11日にハーバード大学で開かれたBrilive(ブラジル国際ライブコンフェレンス)に招待され、大勢の前で講演したのです。ユーチューブ開設からわずか4か月の出来事です。
ハーバードで講演することが決まった彼は思わずカメラの前で声を震わせて涙を流しました。
「コパカバーナで水を売っていた男がハーバード大学で講演することになったんだ。みんなに言いたいんだけど、自分の夢は信じないといけないんだ。諦めちゃだめなんだ。
俺が今まで何度地面にたたきつけられたことか。だけど決して勇気だけは捨てなかった。その度に起き上って、戦い続けたんだ。だから何が起きても頑張らないといけないだ。
来週、俺はアメリカのハーバードで講演するからね」
Rick Chesther(ヒック・シェステル)の戦略
これだけ聞くと、SNSでバズッた幸運な男のサクセスストーリーという感じがしますが、実はヒック・シェステルは戦略家であることがわかります。まず、水の商売を例に挙げると、彼のアイデアはこのようなものでした。
- リオは暑いから道行く人は喉が渇いているのではないだろうか?=水を仕入れる
- リオで喉が渇いている人がたくさん集まっている場所はどこか?=ビーチ
- 水が高く売れる場所はどこか?=リゾート地のコパカバーナ
- 水以外に売れるものは何か?=傘(水だけでなく傘を仕入れておいて、晴れたら水を、雨が降ったら傘を売った)
また、ユーチューブにおける彼の差別化は次のようなものでした。
- 貧しい男が自宅の小さな部屋から起業についてレクチャーする
- 動画を1分間にまとめる
- とにかく早口で喋る(もともと早口)
- 熱い体験談を交える
ブラジルにおいてビジネスやマインドセットを教えるユーチューバーはいい大学を卒業し、ネクタイを締め、スーツ姿で動画を録画している人がほとんどです。
そんな中ヒック・シェステルは学歴も大きな実績もないまま、タンクトップ姿でむき出しのマットレスがぽつんとある部屋の中で起業についての動画を配信したのです。
何よりヒック・シェステルが抜きん出てることは体裁にこだわらずに真っ先に行動したことでしょう。
売るものがないから商売ができない。機材がないからユーチューバーになれない、なんてこと言わずにとにかく自分のできることから始めたのです。
情熱溢れる彼の動画は多くの人の心を鷲掴みにしました。こんな状況の自分でもできるんだからお前にもできる!とリスナーに呼びかける彼の言葉は、プロが編集し、お金をかけたほかの多くのセミナー動画よりもよっぽどリアルだからです。
フォロワーから成功の秘訣を聞かれた彼は次の3つを挙げています。
- 信念(なにがなんでも自分のやること信じること)
- コンテンツ(自分の中身、アイデア、プロダクトを常に磨くこと。計画を実現させること)
- 差別化(自分自身のスタイルを確立し、その分野で先駆者になること)
どん底から這いあがった男のストーリーを聞いて久々に僕も胸が熱くなりました。このストーリーを読んで少しでもあなたのやる気が沸いてきたら幸いです。
こちらのサクセスストーリーもいいですよ。