つい最近、僕が管理するブログに突然、かの有名な日本音楽著作権協会(JASRAC)を名乗る者から苦情メールが届きましたので、その経緯をここに紹介します。
ブログをやっていると著作権だ、個人情報だ、語弊だ、捏造だ、名誉毀損だといった文句が入ることがあります。
しかしよっぽど悪意のある行為をしていない限りは決して怖がる必要はないと僕は思っています。それはある意味、あなたのブログに誰かがクレームを付けるだけの影響力が出てきたということだから。
たとえ特定の誰かに損害を与える、あるいは傷つけるためにやっていなくても、情報は誰かには有益になりうると同時に他の誰かには有害にもなりうるといった諸刃の剣です。
以前にはコテコテのトレンドブログに芸能事務所を名乗る人からクレームが入ったこともありました。
さて、今回のクレーム元は「日本音楽著作権協会(JASRAC) 」名義でした。内容は以下の通りです。ブログ名とブログのURL以外は原文のままです。
差出人: 日本音楽著作権協会(JASRAC) <notice@pop02.jasrac.or.jp>
題名: 【重要】JASRACから音楽の著作権手続きについてメッセージ本文:
こちらは日本音楽著作権協会(JASRAC)です。あなたのウェブサイト
サイト名:xxxxxxx
サイトトップURL:http://www.xxxxx.com/では現在、当協会の管理楽曲(以下、「管理楽曲」という)を、
①本来の歌詞
および
②本来の歌詞を翻訳して
掲載しております。【①について】
ウェブサイト上に歌詞を掲載するなどして管理楽曲を利用する場合には、事前に当協会(JASRAC)に利用許諾の申込をし、当協会の許諾を得る必要があります。
************************************************
つきましては、本メール受信後 5日以内に、
(1) 管理楽曲の利用を開始された時から現在までの利用期間分の清算手続
(2) 今後の利用許諾手続
をJASRACオンラインライセンス 窓口 J-TAKT(https://j-takt.jasrac.or.jp)より行ってくださるようお願いいたします。
なお、本メールを受信された後に、管理楽曲をウェブサイトから削除されて、今後、管理楽曲の利用を行わない場合でも、必ず上記(1)の手続きをお願いいたします。
*************************************************【②について】
本来の歌詞を翻訳する場合に著作権者の許諾を得ずに無断で変更することは、著作権法第20条に定める「同一性保持権」などの著作者人格権や第27条に定める「翻訳権」を侵害することになりますが、当協会(JASRAC)では「同一性保持権」や「翻案権」を管理していないため、当協会が許諾することはできません。よって著作権者に直接許諾を得る必要があります。
**************************************************
そのため現時点で、著作権者からの許諾を確認できないことから、本メール受信後ただちに翻訳した歌詞はウェブサイトから削除していただきますようお願いいたします。
**************************************************なお、本件についてメールでお問い合わせいただく場合は、
運営者名(ハンドル名)とサイトURLを必ずご記載ください。
一般社団法人 日本音楽著作権協会 調査部
http://www.jasrac.or.jp/
notice@pop02.jasrac.or.jp
03-3481-2119
ここに書いてあるように僕はあるブログで、とある外国人歌手の歌とその歌詞を日本語訳を付けて紹介しました。
もちろんその際には作詞作曲者の名前は記載してあります。ちなみにここでいう歌というのはユーチューブにアップされているレコード会社の正式なチャンネルの動画です。
正直に言いますと、外国語の歌を翻訳して紹介することが「翻訳権」に触れるということはそれまで僕は知りませんでした。
ほかのブログやサイトでも当たり前にやられていること(特に歌詞サイト)なので、てっきり問題ないとばかり思っていました。その点については認識が甘かったようです。
「同一性保持権」と「翻訳権」についてはこちら(wikipedia)
それならそうと、早急に削除しようと思ったのですが、ここでふとおかしな点に気づいたのです。そう、それはメールのどこにも曲名が書かれていないのです。
権利を主張しているくせに自分たちの所有している楽曲のことには触れていないというのはなんともおかしな話。これを機に僕にはある疑念が生まれました。
もしかしてこれって詐欺メールじゃないの?
その理由の一つとして僕がブログで紹介した歌は日本ではかなりマイナーなブラジル人のポルトガル語の楽曲ばかりです。その権利を日本音楽著作権協会(JASRAC)が所有しているというのがまず不思議でした。
ブログに送られてきたメールが詐欺がどうか検証してみた
1、メールアドレスが公式のものかどうかをチェック
一つ疑いを持つと、また別の疑いが出てきます。一つはメールアドレスが「notice@pop02.jasrac.or.jp」といかにも適当だったことです。このメールアドレスをグーグルで検索すると、トップにこんなURLが出てきます。権利に厳しい団体なのでおちおちプリントスクリーンもできませんのでモザイクかけておきます。
注目したいのは、URLが正式なJASRACのものであるらしいこと。そして確かに送られてきたメールアドレスと同じメールが掲載されていることです。ということはメールアドレスは本物?
2、電話番号が正式なものがどうかチェック
もう一度メールの内容を見てもらえると分かりますがそこに記載されていた電話番号は「03-3481-2119」でした。今度はこの番号をグーグル検索にかけてみます。するとどうでしょうか。
ありました。電話番号もどうやら間違っていないようです。
ということは? まさか本物?
頭がどんどん混乱してきました。同時に不思議な現象がまた一つ起きました。というのも「03-3481-2119」をグーグル検索にかけると、トップページにほとんどに「架空請求、詐欺の相談センター」のような会社のブログが表示されるからです。
そこにはこのメールが詐欺であること、実在の業者とは一切関係ないことなどが指摘されています。そして「架空請求や詐欺のことならなんでも相談に乗ります」と続いてるのです。
でも待てよ。相談センターが詐欺っていう可能性もあるんじゃない?
もう僕には分かりません。なので次の手段に出ました。
3、実在の会社(この場合、日本音楽著作権協会(JASRAC))に確認を取る
ここで間違ってもメール内にあるリンクなどは踏まないことです。どんなウイルスが仕掛けられているか分かったもんじゃありません。記載されている電話にかけるのも念のためやめておきましょう。
メールに返信するのも避けました。代わりに日本音楽著作権協会(JASRAC)のホームページから問い合わせフォームに入り、連絡をしてみました。
メール内容はおおよそ、「こんなメールが来たんですけど送りましたでしょうか。もし送った場合は、該当する歌詞を削除いたしますので私のブログにあるどの楽曲のことを指しているのか教えてください」といった簡単な文です。
するとどうでしょうか。待てど暮らせど返信が来ません。向こうから「メール受信後 5日以内に管理楽曲の利用を開始された時から現在までの利用期間分の清算手続」を要求してきた割にはなんの連絡もないのです。
やっぱり詐欺メールだったんでしょうか? それとも「こいつは貧乏そうだから、大したお金なんて取れないだろう、時間の無駄だ、けっ」と思っては諦めたんでしょうか。
いずれにしろこれを機にブログに歌詞を載せるのはアウトで、翻訳してもダメだということが分かりひとつ勉強になりました。問題になるのも嫌なので、念のため歌詞を翻訳した疑わしい記事は削除しておきました。
実際のところどんなふうに制裁が課せられるのかは分かりません。もしかしたら人気のブログやサイトなんかは訴訟問題になっているところもあるのかもしれません。いずれにしろなにかあったら自己責任ということです。
ーー追記ーー
それから数日して日本音楽著作権協会(JASRAC)から返信がありました。メールは本物でした。マイナーな外国語の楽曲までまさか同団体が権利を保有しているなんて知りませんでした。みなさんもブログに楽曲や歌詞を載せるときはくれぐれも注意してください。
ちなみに返信メールには、最初に来たクレームのメールの住所と電話番号が記してありました。やっぱりこのメールと電話で管理していることは間違いなさそうです。
一般社団法人 日本音楽著作権協会 調査部
http://www.jasrac.or.jp/
notice@pop02.jasrac.or.jp
03-3481-2119
ということは「実在の業者とは一切関係のない詐欺メールだ」と豪語していた「相談センター」が詐欺ということ? もしそうだとしたら恐ろしい話ですね。ああ、怖い。
ちなみに以下のブログサービスでは日本音楽著作権協会(JASRAC)利用許諾契約を締結しているようで、歌詞の掲載がOKになったそうです。
利用許諾契約を締結しているUGCサービスリストの公表について
・アメーバブログ
・JUGEM
・Seesaaブログ
・textream
・プリ画像
・Yahoo!知恵袋
・Yahoo!ブログ
・ヤプログ!
・ライブドアブログ
・楽天ブログ
いずれにしろ歌詞や音楽動画は権利がうるさく、デリケートなので使用するときはくれぐれも注意してください。なお、ブログで合法的に使える動画チャンネルはこちらでまとめてあります。
まとめ
もしあなたが歌詞の転載や翻訳を中心にブログ運営をしているのなら、今すぐブログの方向性を考え直したほうがいいかもしれません。そのブログは資産になるどころか、最悪訴えられて負債になりかねないからです。
やはりブログは転載やリライトに頼るのではなく、オリジナルの記事を書いて、しっかりと集客し、収益化していくべきです。